*物語の現場から* 『アルカトラズからの脱出』(編集委員:E.H)

『アルカトラズからの脱出』 1979年 アメリカ映画

監督: ドン・シーゲル 主演: クリント・イーストウッド、 パトリック・マクグーハン、フレッド・ウォード

 これまで脱獄を試みた者は全て、射殺か溺死。かのアル・カポネも収監されていたサンフランシスコ湾に浮かぶアルカトラズ刑務所。フィッシャーマンズ・ワー フから目と鼻の先のこの島が難攻不落と言われたのは、陸地に近くとも潮の流れが激しく、島から陸地まで泳ぎきる事は不可能とされたから。ザ・ロックと呼ば れる要塞の様な刑務所でした。?

「大脱走」「シャーシャンクの空に」「パピヨン」などの脱獄を描いた作品はいろいろありますが、事務局ライブラリー所蔵の「アルカトラズからの脱出」も手応え十分の面白さ、しかも実話です。よろしかったらご覧ください。

サンフランシスコの港から護送船に乗せられこの島に渡って来るイーストウッド(フランク・モリス)。 相変わらずニコリともしないニヒルぶり。渋いです。刑務所内には、ネズミをペット代わりに可愛がるリトマス、画家のドク、ライブラリー係りのイングリッ シュ、刑務所内でも曰くつきの凶暴者ウルフ、フランクの相棒でおとなしく気のいいバッツ。そして厳格な刑務所長と看守たち。閉鎖的な空間と限られた登場人物ですが、サスペンスタッチで進むストーリーは大変面白く飽きさせません。

 先月サンフランシスコを訪れ、実際にアルカトラス島へのナイトツアーに参加してみました。夕方の5時にピアーを遊覧船で出発。夏の夕方でも風は冷たく、ジャケットが必要です。カモメたちに追われながら乗船すること20分、次第に要塞の様な巨大な刑務所が近づいて来ます。上陸してみると、島の至るところに美しい花々が咲き乱れているのには驚きでした。日本語のガイドフォーンを聞きながら、見学ルートを辿りましたが、全く映画で見た通りの刑務所内の雰囲気にひたすら感激でした。脱獄を図る主人公ら一行が、見回りの看守の目をくらませる為作ったダミーの人形の頭や、支給されていたレインコートを駆使して作った救命ジャケット等も、館内に展示されていました。売店では、牢屋の鍵をもじったキーホルダー、クリント・イーストウッドが着ていた囚人服もお土産用に売られています。

 実際のアルカトラズ刑務所は、既に1963年に封鎖、現在は国立公園に指定され、人気の観光スポットとなっています。帰りのフェリーから見るサンフランシスコの街の夜景は、物々しい刑務所とは裏腹に切ないほどにロマンチックでした。

編集委員:E.H

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