コロナ禍!—郵便局での善意のパンデミックー

昨今のコロナ渦の影響で、家で過ごす時間が多くなり、人とのつながりが制限され、口数も少なくなっているために、人と関わる機会や他者を思いやる状況が起こりにくくなり、コミュニケーションも機械的でミニマムなものになっているようです。

しかし、そんな状況の中、Barrigada 郵便局で心温まる出来事に遭遇しました。ロックダウンが緩和され、郵便物を郵送したり、届いた郵便物を受け取る為に、大勢の人達が郵便局に押しかけた時期の事です。郵便局には長い列が出来、あまりの長さに仰天し、出直して来た人達も多数いました。

私は、局の業務が始まる1時間前(午前8時)に着いたのですが、すでに行列が出来ていました。郵便物を送る人の列。郵便物を受け取る人の列。どちらの列も大変長く、殆どの人がスマホを手に、静かに順番を待ち続けます。時計に目をやる人。ため息をつく人。小声で電話をかける人。長い長い待ち時間。

業務が始まると、長い列は少しずつ前に進み始めました。10時頃になると、自分の番が近づいている事にホッとしました。10時半には、ここを出られるだろうかと考えていた矢先でした。私の後ろに並んでいた男性Aが “Oh, God!”(なんてこった)と低く呟いたのが聞こえました。まもなく男性は、自分の後ろの男性Bに “You can take my spot. I forgot something.”(僕の場所を取っていいですよ、忘れ物をしたので)と伝え、自分の場所を譲ろうとしました。突然のオファーに、男性Bはキョトンとしていましたが、立ち去ろうとする男性Aを呼び止め “What happened? What did you forget?”(どうしたんですか?何を忘れたんですか?)と尋ねました。男性Aが肩をすくめ、財布を忘れた事を告げると、男性Bは、男性Aが抱えていた大きな封筒を指差し “How much is the postage for that?”(それにかかる郵送料はいくら?)と尋ねました。男性Aが答えられずにいると、男性Bの後ろにいた男性Cが近づいて来て封筒を手に取り、重量を量るような仕草をし “$30 may be enough.”(30ドルぐらいあれば充分かも)と言いました。

すると、男性Bは男性Aに “You have been waiting for hours. Don’t leave. Let me pay.”(あなたは何時間も待ったじゃないですか。帰らないで。私に払わせて。)と申し出たのです。辞退して帰ろうとする男性Aに、男性Cも “Let me join you. I want to help.” (僕も仲間に入れて。ヘルプしたいから)と申し出ました。すると、男性Cの後ろにいた女性が近づいて来て “You guys are great. I will join you.”(あなた達すごいわね。私も協力するわ)と申し出ました。3人は何やら小声で話し合い、それぞれお金を出し始めました。あっけに取られて見ていた私も仲間に入り、ちょうど財布に入っていた5ドルを差し出しました。

集まったお金(40ドルくらい)を男性に渡すと、男性は、お金を返したいので宛先を教えてほしいと頼みましたが、微笑むばかりで誰も教えてはくれません。男性は震える声で何度もお礼を言い、信じられないというような仕草をし、目頭をぬぐっていました。こうして見知らぬ者同士がほんの1〜2分の間に善意を通してつながり、素早く行動し、男性を助ける事が出来たのです。

お金が手渡された後も、その様子を見ていた他の人達が話しかけて来て、お金が足りないなら参加したいと申し出て来ました。善意の気持ちのプチ・パンデミックがそこに発生したのは確かです。厄介な事も広まるけれど、良い事も広まるのでしょう。ソーシャルディスタンスで人と距離を置かねばならない状況でも、よく観察して見ると、私達が出来る小さな親切のチャンスは、降り注ぐように毎日やって来ているのかも知れませんね。

投稿 T.I.

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