ポンペイ通信・シランカオ!

南の島での生活が長かった身には、温度差が激しい近頃の気象はこたえる。自律神経失調気味の日々が続き、どこへ出かける気にもなれない。そこで今回は例によってポンペイに住む旧友からのメールをご紹介し、緩くゆったりとした異次元の世界を覗いて頂こうと思う:曰く《今年もまたマンゴのシーズンが巡って来ました。昨年の台風で倒れてしまった木も多いけど、幸い我が家の周りは無事でした。でも、実は小ぶりで甘味も少ないようです。連日、昼夜を問わずトタン屋根をドカンと叩く音には慣れてますが、真夜中に起こされると頭にきます。朝早くからカピンガマランギ村の子供たちが拾いに来て、我が家のワン公に追われているのも毎年の光景です。貧しい家が多いので、この時季は子供たちが甘い物を腹いっぱい食べられる幸せな季節でもあります。出始めの頃は1個25セント、街中で椰子の葉で編んだ篭に20~30個入ったのが5~10ドルで売られてましたが、最盛期に入ると篭の値段は極端に下がります。昨日も近くの橋の袂で子供が篭を置いて座ってましたが、なかなか売れません。午前中は10ドル、午後は5ドルに下がり、夕方には地面にフリー・マンゴと小石を並べて書いて置いて行きました。その子が今朝もまた新しいのを拾ってきて、一篭10ドルから始めてます。おそらく今日も売れないでしょう。委任統治時代の記録に「食いものが空から降って来るのがポナペです。パンの実、パパイア、マンゴ、ヤシの実、グアバ等々、落ちてくるのを待っていれば良いだけ、島民は決して登って取ろうとはしません」とありますが、今でもあまり変わりませんね。幸せな島です。》曰く《今日は年に一度の車検日でした。警察の車検場へ行き担当のコイケさんに申請書を提出。黒いサングラスをしてタモリにそっくりのコイケさんは、曽祖父が日本人で学校の先生でした。でも、彼は日本語は話せません。例年だとライト類、ワイパー、ホーン、ブレーキ等を一応チェックするのですが、事務所の小窓から黙って検査証明と手数料の請求書を差出します。「検査は?」と問うと「あんたはこの雨の中ここまで無事に乗って来たのだから車はダイジョーブ、バッキンなし、シランカオ」と、サングラスの奥の目が笑ってます。雨に濡れるのが嫌なのです。会計係へ行き手数料10ドルを払って領収証を貰い、戻ってそれを提示すると来年までOKの新ステッカーを渡してくれました。ところで、ダイジョーブ、バッキン、シランカオの語源は勿論日本語ですが、ポナペ語となってしっかり定着しています。特にシランカオが残っていることは実に哲学的?ですよね。》

(「せれね」2016年7月号)より抜粋

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